ID-POSを販促に活用する

小売業から入手したID-POSを販促に活用する方法を説明します。

ID-POSを商談で活用

消費財・食品・飲料メーカーの営業担当者向け

・ 個企業ID-POSの活用
販促ターゲット別の活用方法
 ① 一度買ったお客様にリピート購入を促す
 ② リピート客を優良顧客に押し上げる
 ③ 併買されそうな商品の購入を促す
 ④ 次に購入しそうな商品を先回りして紹介する
 ⑤ 一度も購入していないお客様に購入を促す

・ まとめ

個企業ID-POSの活用

ID-POSの種類は大きく分けて2つあります。1つは、ドラッグストアなどの小売業から入手するID-POSで、その企業における売上データを確認することができます(ここでは個企業ID-POSと呼びます)。もう1つは、市場の状況を継続的にトラッキングする目的で複数企業のデータを集約したパネル店ID-POSと呼ばれるデータです。
今回は、前者の個企業ID-POSを販促活用する方法に触れます。

これまで、ID-POS分析による好不調要因の特定と解決に繋がる打ち手について触れてきましたが、個企業ID-POSを活用する最も大きなメリットは、ターゲット客ごとにダイレクトに最適なアプローチをする施策を考えられる点です。
実際に販促を実施するのは小売業であることが多いのですが、「お客様AさまとBさま…にレシートクーポンを発券してください」といった提案を明確な根拠に基づき行うことで投資対効果が高まりますし、チラシ特売のように「フタを開けてみたら想定外に費用がかかってしまった」ということも避けられます。

次の段落からは、どのようにデータ活用すればよいかを説明します。小売業のASP (インターネット上のアプリケーション) からID-POSを入手している場合は、ASP内で会員IDを抽出できることが前提となります。

販促ターゲット別の活用方法

① 一度買ったお客様にリピート購入を促す

『新規客にリピート購入してもらいたい』『先月購入したお客様に今月も購入してもらいたい』といった際には、前期間の購入実績を会員ID別に抽出してターゲットを選定します。
その商品の使用サイクル(何日で使い終わるか)や購入インターバル(リピート購入しているお客様は何日後に購入しているか)を考慮し、販促を仕掛けるベストなタイミングを見極めるべきです。
販促策としては、レシートクーポン、プラスポイント、メール配信(リピート購入を促す)などが考えられます。

例)A商品の購入インターバルはおおよそ70~80日(平均値ではなく最頻値が70~80日ということ)
 1月にA商品を購入したお客様のうち2月にリピート購入していないお客様を抽出(販促ターゲット)
 3月上旬にターゲット客にリピート促進メールを送信

参考ページ
→→新規客・リピート客・継続客とは?
→→購入インターバル分析とは?

② リピート客を優良顧客に押し上げる

『 定期的に購入してくれるお客様を今後も維持したい』『リピート客にもっとたくさん購入してもらいたい』のような際には、該当商品の購入金額や購入数量を会員ID別に上位から順に並べてみます。いわゆるデシル分析の要領で、育成したいターゲット層を絞ります。全購入客に一律の施策を行わないので施策効果が高まったり、販促費用が安く済んだりというメリットがあります。
販促策としては、継続購入への謝意を示す特典(ポイント・プレゼントなど)、使い続けることで得られる効果の訴求などが考えられます。

例)直近1年間のA商品購入客を購入金額順にデシル分析(お客様を10グループに分ける)
 デシル①~デシル②のお客様には次回購入時にプラスポイントを進呈
 デシル③~デシル⑤のお客様には継続使用を促す動画や読み物などのコンテンツを配信

参考ページ
→→デシル分析とは?

③ 併買されそうな商品の購入を促す

『化粧水購入客に乳液も併買してもらいたい』のような際には、期間併買分析を行い化粧水は購入しているけれど乳液はまだ購入していないお客様を抽出し併買促進策のターゲットとします。併買を促す対象品が関連購買を期待できる商品であるか事前に確認しておきましょう。また、自身が担当する小売業の併買率が市場や競合と比較して高いか否かを把握していると、目標設定がしやすくなります。
販促策としては、サンプリング、同時購入特典、併用することのメリットを接客時や売場で訴求する、などが考えられます。

例)A商品とB商品が併買されやすい(関連購買されやすい)ことを事前に確認(併買率が高いことを確認)
 自身が担当するXドラッグストアの併買率は25%だが、競合のY社は併買率35%なので、目標は10%UPとする
 1月~2月にA商品を購入しているがB商品を併買していないお客様を抽出(販促ターゲット)
 3月にターゲット客にB商品のサンプリングを実施

参考ページ
→→併買分析(併売分析)とは?

④ 次に購入しそうな商品を先回りして紹介する

育児用品カテゴリーのような子供の成長に合わせて必要になる商品が予測しやすいカテゴリーでは、先回りして商品を紹介(レコメンド)することで顧客を繋ぎとめることができます。流出先分析により、A商品を購入したお客様は後期間にどんな商品を購入しやすいかを把握することも可能です。ただし、過度に行うとお客様から気味悪がられるので(何故わが家の状況を把握しているのだろうか…のように)ほどほどにしましょう。
販促策としては、サンプリング、商品の購入時期(切り替え時期)であることの訴求、初回購入特典(プラスポイントやクーポン)、などが考えられます。

例)新生児用おむつを購入したお客様は後期間にSサイズおむつを購入しやすい
 (この例はあえて分析しなくても分かりますがご容赦ください)
 前月に新生児用紙おむつを購入したお客様を抽出(販促ターゲット)
 翌月にターゲット客にSサイズ紙おむつのサンプリングを実施
 さらに、〇月後にターゲット客に離乳食のなどのクーポンを配布

参考ページ
→→ 流入元・流出先とは?

⑤ 一度も購入していないお客様に購入を促す

現在購入しているお客様の特徴を分析して、まだ購入していないが今後購入しそうなターゲットを選定します。ストアそのものの優良顧客(よく来店し様々なカテゴリを購入する客)をターゲットとすることも有効(RFM分析)です。
販促策としては、サンプリング、初回購入特典(レシートクーポン)、使用することのメリット訴求(接客や売場で)などが考えられます。

例)〇〇カテゴリを購入している女性20代はA商品の購入率が高い
 直近6か月間に○○カテゴリを購入している 女性20代客を抽出
 ターゲット客に対し、レシートクーポンで初回購入特典(プラスポイントなど)を訴求

参考ページ
→→RFM分析とは?

まとめ

ID-POSを販促に活用する画像

以上のように、ターゲット客ごとに施策を分けて、かつダイレクトにアプローチすることで、一律の販促を行うよりも少ない販促費用で高い効果が期待できます。個企業ID-POSを入手する最大の価値はそこにありますので、積極的に販促活用してみましょう。