オーケー・花王問題 その後(2022.03)

ID-POSを商談で活用

消費財・食品・飲料メーカーの営業担当者向け

関東でスーパーマーケット事業を展開するオーケーは、2022年1月31日より花王商品約500品目のうち約3割にあたる145品目の取り扱いを中止しています。今回は各方面で波紋を呼んでいるこの問題について考えます。

オーケー・花王問題のその後
①取り扱い中止後の店頭告知(2月撮影)
取り扱い中止後の店頭告知(2月撮影)

花王(株)様 商品の取扱いについて
オーケーの経営方針は、『高品質・Everyday Low Price』です。『万一、他店より高い商品がございましたら、お知らせください。値下げします。』のポスターを掲げ、ナショナルブランド商品については地域一番の安値を目指しています。
競合店の売価を調査し、オーケーの価格が競合店の価格(特売品・目玉品を含む)より高い場合、私たちは、『競合店に対抗して値下げしました。』のPOPをつけ、値下げして販売します。だから、オーケーで買って損をすることはないのです。
花王(株)様の一部商品の取り扱い中止により、お客様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。取扱い復活を希望される商品がございましたら、「ご意見カード」で是非お知らせください。
2022年2月22日 オーケー株式会社

オーケー・花王問題のその後
②店頭告知(3月撮影)
店頭告知(3月後半撮影)

直近の店頭状況

オーケーが花王の一部商品の取り扱いを中止してから2カ月近く経つ。店頭を訪れてみると、取り扱い中止直後に掲げられていた告知よりは小さいサイズで目立たないように掲げられているが、依然として売場からは締め出されたままのようである。
ただし、他の売り場に目を移すと値上げの告知も散見されることから、オーケー側も多少は態度を軟化させている可能性もうかがえる。

オーケー・花王問題のその後
③店頭告知(3月撮影)

「日清食品 カップ麺・袋麺・カップライス・カップスープ」各種の値上げについて
原材料価格高騰のため、メーカーが6月1日(水)より出荷価格の5%~12%の値上げを発表しました。当社は他社に先駆けての値上げはいたしません。値上げになる場合は、売場で早めにお知らせしますが、いずれにしてもお安い今うちに お買い求めください。


Every Day Low Priceを掲げるオーケーにとって『価格』はお客様を繋ぎとめる唯一の手段であるため、値上げに対して過剰に反応するのは仕方なのいことなのだろうか。”当社は他社に先駆けての値上げはいたしません”の一文にディスカウンターとしてのプライドを感じる。

この問題について考える

本件については賛否あるようだが、原材料費や輸送費が値上げしているなかで納入価格の値上げを認めず取り扱いを中止するオーケーのやり方には「問題がある」と言わざるを得ない。

小売業がEvery Day Low Priceをアピールすることに文句をつけるつもりはない。重要なのは、”安売りの原資を何で捻出したか”である。『納入業者に圧力をかけての取引価格の値下げ』『理不尽なリベートの要求』『物流センターフィーなどの協力金を必要以上に要求し他の目的に転用』『自社従業員へのサービス残業の強要や残業代の未払い』などは許されることではなく、それらを原資に実現するEvery Day Low Priceであってはならない。
*オーケーがそのようなことをしているとは言っていない。

SDGsが叫ばれる時代である。SDGsではフェアトレードにより生産者と労働者の権利を保障し、世界中から飢餓をなくすことを目標に掲げている。本件とは直接関係ないとしてもこの時代において、商品は価値に見合った適切な価格で”Win-Win”の取引がされるべきであり、それが回り回って経済の成長や社会の発展に繋がる。だから、消費者も”安ければよい”ではない正しい視点が求められる。

今後のロシア情勢によっては更なる原材料費の高騰が想定される。原材料費や輸送費の高騰をメーカーや卸売業者が全てを被るのはおかしなことで、小売業も状況を理解し3者が協働して消費者に理解を求めるのが当然あるべき姿ではないだろうか。今回花王が投じた一石が”あるべき姿”に転換する契機になることを期待したい。

筆者はメーカー勤務者ですが花王株式会社とは一切関係がありません。