流入元・流出先を分析し、自社商品を購入する以前・以後の購入状況を把握します

ID-POSを商談で活用
消費財・食品・飲料メーカーの営業担当者向け
・流入元・流出先とは?
・なぜ、流入元・流出先を分析する必要があるのか?
・分析をする際のコツや留意点
・商談でどう活用すればよいか?
流入元・流出先とは?

流入元は、ある期間に商品を購入したお客様が前期間に購入した商品のことを指します。流出先は、ある期間に商品を購入したお客様が後期間に購入した商品のことを指します。また、ある商品を購入したお客様が前回購入した商品を直前購入と言い、ある商品を購入したお客様が次回購入した商品を直後購入と言います。いずれも、通常は同一カテゴリ内で分析をします。
なぜ、流入元・流出先を分析する必要があるのか?
流入元を分析すると、「A商品購入客は、以前B商品を購入していたお客様が多い…」といったことが分かります。
仮に、A商品が1000円、B商品が600円だとすると、B商品からA商品にスイッチしてもらえればストアにとってはトレードアップ(客単価UP)に成功していると言えます。
メーカーの営業担当者にとっては、「競合ブランドのお客様を獲得できた」や「同一ブランドからの流入(商品スイッチ)が多く客数拡大に繋がっていない」などを確認することができます。また、流出先を分析すれば「客数が減少しているのは競合ブランドにお客様を奪われているからだ」といった要因分析にもなります。
つまり、流入元・流出先を分析することで、客数/客単価増減の要因を把握することができます。
トレードアップについて
小売業のバイヤーのなかには、トレードアップを提案しても前向きに捉えてもらえない人がいます。ストアにとって重要なのは客数を増やすことであり、様々な価格帯の商品を品揃えすることで多くのお客様を獲得できると考えるからです。トレードアップを目的とした高単価商品の品揃えが増えることでお客様に「あの店は高い」と思われるのを避けたいですし。
メーカーのブランド担当者は通常品よりもワンランク高いプレミアム品を発売しがちですが、まず重要なのはカテゴリ新規客を獲得することであるとご理解ください。
分析をする際のコツや留意点
流入元(ないし流出先)分析は、具体的には以下のような分析となります。
19年7月~12月にA美容液を購入したお客様が前6か月(19年1月~6月)に購入した美容液は?
基準期間:19年7月~12月 基準商品:A美容液
流入元期間:19年1月~6月 流入元カテゴリ:美容液
抽出するデータ:
① 基準期間(19年7月~12月)に基準商品(A美容液)を購入した客数と平均単価
② 流入元期間(19年1月~6月)に流入元カテゴリ(美容液)を購入した客数合計と平均単価
③ 上記②のブランド(ないし商品)ごとの客数と平均単価
結果:
19年7月~12月のA美容液購入…200人/平均単価5000円
200人のうち19年1月~6月美容液購入…120人/平均単価3500円
→流入元あり60%(120人÷200人)
流入元1位 B美容液20人/平均単価3000円 →購入率10%(20人÷200人)
流入元2位 C美容液10人/平均単価4000円 →購入率5%(10人÷200人)
一般的には、流入元(ないし流出先)は同一カテゴリ内で行うのが基本です(Aファンデーションを購入したお客様の流入元を調べるのであればファンデーションカテゴリ内で分析する)
流入元(ないし流出先)期間は長めに設定することも重要です。基本的には、分析カテゴリの平均購入サイクル(1人あたり何ヶ月に1個購入するか)よりも長くするべきです。期間が短いと未購入=流入元なしというお客様が多くなってしまいます。
また、流出先を分析すると、期間をきちんと長めに設定しても未購入=流出先なしというお客様が意外と多いことに気付きます。流出先分析はブランド(ないし商品)の離反客が何を購入しているかを分析する目的で行うのですが、離反客の多くは競合品に奪われることよりも何も購入しなくなることの方が多いと知っておいてください。なので私はあまり流出先は分析しません。
データは客数だけでなく必ず平均単価(1個あたりの価格)も算出します。上記例の場合、19年7月~12月に購入されたA美容液は平均5000円です。その購入客が19年1月~6月に購入していた美容液の平均は3500円です。つまり、A美容液を購入いただいたことで単価が1500円UP(いわゆるトレードアップ)したことが分かります。
本ページ冒頭の流入元・流出先とは?で説明した直前購入/直後購入は、ASP(インターネット上のアプリケーション)によってはデータ抽出ができませんのでご注意ください。
商談でどう活用すればよいか?
商談で活用する際には、下記のようにリスト化するのが一般的です。自社商品からの流入(ないし自社商品への流出)がどの程度いるのか…、流入元の平均単価と比較してトレードアップできているかいないか…を確認しましょう。

また、流出入データを使って以下のような表現をすることもできます。

こちらのグラフは、「各ブランドを購入する前の期間(6か月間)」「各ブランドを購入している期間(6か月間)」「各ブランドを離反した後の期間(6か月間)」に分けて顧客を抽出し、1人あたりカテゴリ購入金額を算出しグラフ化したものです。Aブランドを購入するとカテゴリ購入金額が大幅に高まり、離反してしまうとカテゴリ購入金額も元に戻てしまうことが分かります。このデータから、Aブランドの購入客を増やす必要性や離反しないよう努力する価値があることをアピールできます。
なかなかこのように都合よいデータが出るとは限りませんが、商談での説得力は高いこと間違いなしです。